あらすじ
リディアは、ずっと我慢が得意だった。
婚約者の家の帳簿を整え、支払いを回し、誰かの困りごとを黙って埋めてきた。
けれど彼は、病弱な幼なじみを守るため、また彼女に告げる。
彼女のためだ、我慢してくれ。
夜会の席を譲らされるだけなら、まだ耐えられた。
だが祖母の形見である印章が、別の令嬢の胸元で揺れていた。
その印章は、飾りではない。
リディアの名義と責任を動かす、たった一つの証だった。
彼女は初めて、婚約者のための帳簿を閉じる。
誰かを守るために、誰かを差し出す関係。
その中で便利に使われてきたリディアは、自分の名を取り戻せるのか。