あらすじ
3歳になる愛息の命を救うため、会社員のさとるは正体不明の男から手渡された歪な「木製の指輪」を嵌めてしまう。モニターが鼓動を再開し、我が子の命は奇跡的に救われた。しかし、引き換えにさとるの脳内から、小学校からの親友の記憶が綺麗に消滅していた。その指輪は、願いを叶える代わりに、持ち主の過去の記憶をピンポイントで強奪する悪魔の『捕食者』だったのだ。どれだけ物理的に破壊して投げ捨てようとも、気づけば音もなく手元へ「戻って」くる指輪。「書かなきゃ消えちまうんだ!」さとるは自分が「自分」でいられなくなる恐怖に抗うため、一冊の古い日記に必死に過去を書き留める。借金取りの襲撃、妻との大切な出会いの忘却。思い出の熱量をじわじわと喰い荒らされ、孤独な暗闇に怯えながらも、必死に「幸せな父親」を演じ続けるさとる。だが、ある日、大学時代からの同期であり唯一の理解者である親友・優の妻が事故に遭い、致命傷を負ってしまう。絶望する優を救うため、さとるが奪い取った指輪が求めたのは、優の記憶ではなかった。指輪が求めたのは、すでに二度も記憶を貪ってきたさとるの、残りの人生すべてとこれから始まるであろう絶望。「お前という人間がここにいたことを一生賭けて思い出させてやる!!」血の涙を流す親友の絶叫。世界が僕を忘れても、お前だけは僕を忘れないでくれ。さとるが下したあまりにも残酷で、壮絶な「最後の等価交換」の結末とは――。