あらすじ
千登世星藍(ちとせ せいら)は、ごく普通の25歳の女性だった。
友人に誘われ訪れた創作歴史博物館で、彼女はエジプト風エリアの片隅に置かれた不思議な水晶を見つける。何気なく覗き込んだその瞬間、水晶の中には片目がエメラルドグリーンに輝く自分の姿が映っていた。
その直後から世界は二重に見え始める。
左側には見慣れた現代の景色。だが右側には、人間ではない獣人達が暮らす未知の世界が広がっていた。そして獣人達はまるで星藍の存在に気付いているかのように、鋭い視線を向けてくる。
混乱する星藍の前に現れたのは、衛兵達。そして空から舞い降りた鷹族の男、カイムだった。
後頭部に衝撃を受け意識を失った星藍が目を覚ますと、そこは獣人達だけが暮らす異世界「セザール」だった。
元の世界へ帰る方法はない。
なぜならセザールへ招かれた人間は、獣人あるいは半獣人へと変化してしまうからだ。
やがて星藍の身体にも異変が現れる。感情が高ぶるたびに黒い猫耳と尾が現れ、左目は蛇のような縦瞳へと変化していく。人間でもなく、猫族でも蛇族でもない。どの種族にも属せない存在となった星藍は、自分が何者なのか分からなくなってしまう。
そんな彼女を保護したのは、大都市国家ザハールトエトの外壁付近に拠点を構える傭兵団ラヴェラだった。
豪快な団長ロクザ。面倒見の良いゼイン。からかい上手なラシェル。毒使いの医療担当ネルフェ。情報通のサフィール。
個性豊かな仲間達との生活の中で、星藍は少しずつ新たな居場所を見つけていく。
そして傭兵団長補佐であるカイムには、誰にも言えない秘密があった。
彼はずっと昔から星藍を知っていたのだ。
夢の中で現れては消える“不思議な少女”として――。
異世界に招かれた理由も、特別な使命もない。
これは世界を救う物語ではない。
人間でも獣人でもない少女が、自分自身の存在と向き合いながら、大切な仲間達と出会い、一人の男性と恋をし、自らの居場所を見つけていく異世界恋愛ファンタジー。