あらすじ
十七歳の水瀬陽菜は、母・香澄の葬儀で一滴も泣けなかった。無口な父、遅れて現れた兄、そして何も知らされていない自分。母が亡くなっても、家族は最後までばらばらだった。
葬儀の翌日、陽菜は母の部屋で一冊の日記を見つける。表紙には、母の字で「陽菜へ。七日間だけ、私の家族になってください」と書かれていた。日記には、陽菜が覚えていない幼い頃の家族の記憶が綴られていた。
一日目の日記には、家族四人で遊園地へ行った日のこと。二日目には、兄・遼が家を出た本当の理由。三日目には、陽菜が幼い頃に交通事故に遭い、その前後の記憶を失っていた事実が記されていた。
さらに日記を読み進めるうち、事故を起こしたのが母の親友の夫だったこと、母が陽菜に憎しみを背負わせたくない一心で真実を伏せたことが明らかになる。しかしその優しさは、兄の夢を奪い、父を沈黙させ、家族を少しずつ壊していった。
母の嘘は、正しかったわけではない。けれど、愛していなかったわけでもない。
陽菜は父と兄を呼び、三人で母の日記の最後のページを読む。そこに書かれていたのは、「許さなくていい。ただ、もう一度同じ食卓についてほしい」という母の願いだった。
怒りも、後悔も、悲しみも消えない。それでも三人は、母の席をひとつ空けたまま、もう一度食卓を囲むことを選ぶ。
これは、死んだ母が残した七日間の日記を通して、壊れた家族が「許す」より先に「向き合う」ことを覚えていく再生の物語。