あらすじ
――「おやすみ」の数だけ、私たちは傷つき、そして強くなった。
一人の時間を愛する「麗奈」と、常に誰かとの繋がりを求める「頼」。
5年の歳月と、失われた命の記憶、そして別の男との結婚。
歪で、けれど誰よりも切実な二人の、夜通し繋がる「寝落ち通話」の軌跡。
【あらすじ】
一人の静かな時間を何よりも愛する「麗奈」と、常に誰かと繋がっていないと息ができない寂しがり屋の「頼」。
根本的に価値観の合わない二人だったが、スマホのオンラインゲームをきっかけに出会い、毎晩のように朝まで電話を繋ぎ続ける「寝落ち通話」をする関係になっていく。
お互いに離れようとしては引き戻される歪なループの中で、数年前、麗奈は頼との子を妊娠。しかし、現実的な選択として「中絶」を選ぶ。
手術後、心身ともに疲れ果てて別れを告げた麗奈に対し、頼は一世一代の賭けのつもりで「もしまた子どもができたら、その時は絶対に結婚しよう」と言い放つ。その身勝手で残酷な言葉に絶望し、麗奈は彼を激しく軽蔑し、拒絶した。
それでも切れないらいとの絆。泥沼のような依存関係から逃れ、地に足のついた現実を手に入れるため、麗奈はマッチングアプリで出会った医師の男性からのプロポーズを受け入れ、後ろ髪を引かれる思いのまま結婚する。
しかし、夫との生活は冷え切ったものだった。やがて夫との間に新しい命を授かるが、夫は妊娠中の麗奈を労わることもなく、離婚を前提とした話し合いも拒絶される。
そんな中、再び近づく、頼の足音。
二度目の再会。薄暗いホテルの客室で「俺のところに戻って」と強く抱きしめてくるらいに対し、麗奈はついに真実を告げる。
「私、結婚したの。既婚者になったの」
平らな麗奈のお腹にそっと手を添え、そこに宿る別の男の赤ちゃんの存在を察したらいは、絶望の声を漏らす。「……いるの?」と。
決定的な決裂。しかし、物語はそこから新たな変化を迎える。
夫との冷え切った関係に限界を迎えたれなからSOSを聞いた頼は、かつての自身の「既婚歴」から妊婦の大変さを誰よりも理解し、彼女を支える側に回る。夫の不在時を狙って毎日電話をかけ、優しく体調を気遣うらい。
れなが実家へと里帰り出産を決めてからも、二人の長時間の「寝落ち通話」は途切れることなく続いていた。頼の仕事の昇級テスト勉強を麗奈が受話器越しにサポートし、頼は夜通し麗奈の手を引くように繋ぎ続ける。
無事に出産を迎えた麗奈と、努力の末に昇級テストに合格した頼。
受話器越しに、られるはかつての甘えからではなく、一人の自立した男としての「本物の誓い」を麗奈に告げる。
「俺、いつか麗奈と、その子と、三人で一緒に暮らしたい。ちゃんと結婚したいと思ってる」
かつては絶望の引き金だった言葉が、今、未来を照らす約束へと変わる。
歪な周波数を重ね続けた二人が、5年間の暗闇を越えて、新しい朝の光へと歩み出す感動のヒューマンドラマ。
【主要登場人物】
麗奈「れな」(主人公)
一人の時間を愛し、誰かの気配に気が張ってしまう繊細な女性。らいへの「情」と「依存への自制心」の間で揺れ動く。過去に中絶を経験し、現在は夫(医師)との離婚を前提にしながら、お腹の子どもの出産・育児に挑む。
頼「らい」
常に誰かとの繋がりを求める、極端に寂しがり屋な男性。過去に恋愛での裏切りを経験し、人が離れていくことを病的に恐れている。麗奈を失いかけたことで、世間知らずだった自分から自立した大人へと変わろうと決意する。実は既婚歴がある。
麗奈の夫
マッチングアプリで出会った理知的な医師。世間体やキャリアを最優先し、妊娠中の麗奈への思いやりを欠く高圧的な性格。麗奈とは離婚前提で話し合い中だが、聞く耳を持たない。