あらすじ
ソロキャンプ好きの三十二歳、間宮直人は、人付き合いが嫌いというより、筋の通らない人間を見ると黙っていられない男だった。
休日、彼は人の少ない森へ向かう。目的はいつも通り、ひとりでテントを張り、コーヒーを淹れ、焚き火を眺めること。
だが、目的地の広場には、すでに一張りのテントがあった。
持ち主はいない。荷物もない。焚き火の跡もない。
それなのに、テントだけは妙に綺麗だった。
雨に降られた直人は、仕方なくその無人のテントで一夜を過ごす。
夜中、薄目を開けると、テントの外の景色が水底のように歪んでいた。
そして翌朝。
森は、昨日の森ではなくなっていた。
スマホは圏外。地図は現在地を示さない。来たはずの道も、車も、森の入口も消えている。
残されたのは、テントと、自分のキャンプ道具だけ。
趣味だったソロキャンプは、帰り道のない異世界で、本物のサバイバルへと変わる。