あらすじ
金木犀の香る秋の朝。
高校生の朝永いとは、いつものように親友のみほと学校へ向かっていた。
少しお調子者で、勉強は得意ではなくて、それでも自分の名前と友だちのことが大好きな、どこにでもいそうな少女。
そんな彼女の心に、ふいに、見知らぬ声が届く。
――あたしを おもい だして
けれどもその声には、なぜか懐かしい響きがあった。
ある日、いとはみほの誘いで近くの展望台を訪れ、アクアブルーに淡く輝く彗星を目撃する。
その瞬間、いとはあの声を再び聞く。
――やっと あえたね
境界が溶け、ぐるぐる回り、いとは意識を失う。
みほは、自分がこの事態を引き起こしてしまったのではないかと、深く思いつめる。
遠く太陽系の外苑部からやってきた彗星。その彗星は、スピカという名を持ち、必死にいとに呼びかけようとしていた。だがその途中で、なにものかが近づく影に怯える。
――こわい たすけて
その声を最後に交信は途絶える。
呆然とするいと。日常はまだ壊れず、そこにあった。
だが、少女たちの季節はもう、変わり始めていた。
これは、「かつて失われた記憶」と「遠くから呼ぶ声」の物語であり、宇宙の孤独に触れてしまった少女たちの心をたどるドラマである。
――今は亡き、すべてのともへ――