あらすじ
幼い頃から、狭間零(はざま れい)は“何か”を見ていた。
白い霧に溶ける鳥居。遠くから響く少女の声。
祖父に「ただの乱視だ」と封じられ、黒縁メガネの奥に押し込めてきたその“何か”を、零はただの幻だと信じて生きてきた。
都内の進学校・霧狭間高等学校(きりはざま こうとうがっこう)の全寮制男子寮「幽境寮(ゆうきょうりょう)」で、平凡を装う毎日を送っていた零は、幼馴染の藤原 時綱(ふじわら ときつな)に無理やりオカルト同好会へ連れ込まれる。
そこで出会ったひとつ上の先輩・白峰 麗華(しらみね れいか)から、神隠しの話を聞かされた直後——
いつものようにふざけ合った拍子にメガネが壊れ、急遽新しい細フレームのメガネに替えたその夜から、零の視界は狂い始めた。
白い霧。歪む鳥居。遠くから聞こえる少女の声。「げて……逃げて零っ!!」そして、祖父によって封じられていた記憶が蘇る。
実は自分には2つ上の姉・美月(みづき)がいて、8年前に故郷・幽境村(ゆうきょうむら)で神隠しに遭っていたこと。
そして、自分の左目が“幽境の狭間”——古代と現代が溶け合う異界——を視ることができるという、恐ろしい真実。
夏休み、麗華主催の「幽境村 神隠し伝説」調査旅行に乗って故郷へ帰った零は、ついに本物の神隠しに遭う。
狭間の中で出会った平安時代の巫女・櫻姫(さくらひめ)は、静かに告げた。「お前は幼い頃から、この世界の理(ことわり)を視えていた」と。
零に宿った力――刻逆の理(こくぎゃくのことわり)。
時間を“零”に留め、“刻”を逆行させ、世界の理そのものに干渉する力だ。失われた姉・美月。
零の左目に語りかける妖艶な敵・影桜(かげざくら)。
そして、時綱がずっと隠し続けてきた、8年前の真実。過去と現在が折り重なる狭間で、零は問われる。
「お前は、視えてしまった理を、どこまで受け入れる?」静かな日常はすでに崩れ、零の左目に映る白い霧は、日に日に濃くなっていく——。
やがてその力は、最強の理干渉「黄泉返し」へと至る。
しかし黄泉返しの代償は、想像を絶するものだった。失われた者たちを現代に還す代わりに、現代の理に適合しない彼らは、ゆっくりと狂い始める。
零は左目に刻印を残したまま、問い続ける。
「本当に、みんなを救ったのか?」
白い霧は、まだ終わらない。