あらすじ
「お前といても、ときめかないんだ」——五年間想い続けた幼馴染の蒼太から告げられたのは、残酷な別れの言葉だった。『地味で退屈』。その一言が、白波咲良の心を深く抉る。けれど咲良には、蒼太の知らない秘密があった。彼がずっと探し求めている『運命の人』——十年前の夏、海で溺れた彼を助けた麦わら帽子の少女。それは、他の誰でもない咲良自身だったのだ。あなたの理想を壊さないように、地味な服を選び、眼鏡で顔を隠し、大好きだった絵さえ封印して。すべては、あなたの隣にいるために。なのに最後に返ってきたのは『退屈』という言葉。——もう、十分だよね。色褪せた赤いリボンを引き出しにしまい、咲良は決意する。過去の約束に縛られるのはもうやめよう。誰かのためじゃなく、自分のために生きていこう。封印していた絵筆を再び手に取った咲良の前に現れたのは、穏やかな笑顔を持つ青年・蓮。自分を偽らず、ありのままでいられる新しい出会いが、止まっていた咲良の時間を動かし始める。これは、片想いの終わりから始まる再生の物語。あの夏に置いてきた恋を、未来へ歩き出す力に変えるまでの——ひと夏の軌跡。