あらすじ

もう朝なんて来なくていい。 そう思った月島紬《つきしま・つむぎ》が目を覚ましたのは、生と死のあわいにある不思議な駅だった。 薄明かりのホームに立っていたのは、人間の姿をした少年。 けれど紬は、彼が誰なのか、すぐにわかった。 差し出した手に触れる前、必ず一度だけ手の甲をこつんと押してくる癖。 歩くとき、いつも左側に回り込む癖。そして、日なたで眠った毛布みたいな匂い。 死んだはずの愛犬、リクだった。 「迎えに来たんじゃないよ。追い返しに来たの」 そう言ってリクが差し出したのは、過去へ戻るための切符だった。 行き先は、紬が置き去りにしてきた朝ばかり。 言えなかった言葉。 伸ばせなかった手。 守れなかった約束。 そして、最後まで見送れなかった、小さな背中。 リクに叱られ、手を引かれながら、紬はほどけてしまった日々を少しずつ歩き直していく。 陸《リク》へ。 もう一度、この世界に足をつけるために。 これは、死ぬためではなく、生きるために。 亡き愛犬と歩く、朝待ちの物語。

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カクヨム
カクヨム2026/06/06
  • 現在の作品陸へ、紡ぐ