あらすじ

「ご主人様。あなたを殺しに参りました」——そう言ってメイド服の少女が頭を下げるのが、最近の俺の朝の挨拶だ。  元・ヴァルドレア帝国の暗部最強魔導師、〈灰燼《かいじん》〉。数えきれない人間を葬ってきた俺は、何もかもに疲れ果て、辺境フェルンで畑を耕すだけの隠居生活を始めた。……はずだった。だが祖国の抹殺リスト筆頭の俺のもとには、刺客が来すぎる。とはいえ、殺意を向けてきた相手を術式〈芋虫《いもむし》〉で簀巻きにして転がすだけ。もう、誰も殺したくないから。  最初の刺客は、感情を消された暗殺人形フィーネ。返り討ちにし、行き場をなくした彼女を、俺はメイドとして雇った。「お前はもう、道具じゃない」。たったその一言で、人形だった少女は涙を流し、少しずつ人間に戻っていく。——ただし、取り戻した想いは、少しばかり"重すぎた"。毒舌でダウナーなくせに、俺のことになると重く溺愛してくる激重メイドの完成である。  二人目の天然刺客ティルナも返り討ちにして居着き、我が家はメイド二人の賑やかな所帯に。だが平穏は続かない。帝国が、フィーネと同じ硝子の匣で造られた"本物"の暗殺人形を送り込んできたのだ。  「私のご主人様に——触るな」。フィーネが、守るために牙を剥く。殺意に振り切れかけた彼女に、俺は告げた。「殺すかどうかは、塔じゃなくお前が決めろ。お前はもう、あいつらの刃じゃない」。撃退の果てに、フィーネは初めて自分の意思で言った。「私の意思で、あなたを選びます」——人形は、こうして人間になった。  だが、刺客を送る黒幕は暗部のさらに上にいた。帝国宰相オルドリック。辺境も隣国も呑み込む侵略戦争が、静かに動き始めている。隠居したいだけの男は、守るべき家族を得て、もう一度だけ過去に牙を剥く。

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カクヨム
カクヨム2026/06/06
  • 現在の作品元帝国最強魔術師の辺境スローライフ~俺を殺しに来た暗殺者たちをメイドにしていたら、いつの間にか激重に溺愛されていてた~