あらすじ

【あらすじ・紹介文】 『ディレイト Delete』 未来都市A――そこは「幸福」が数式で管理される世界。市民はAIセンター「WIN」によって社会信用スコア(ライフポイント)で格付けされ、自由は“不確定性”として排除されていた。 天才生物学者・水島祐は、この都市で静かに暮らしていた。彼の研究テーマは、AIが最も嫌う「生体ノイズ」――生命の不規則な揺らぎ。唯一の友は、祐の感情を学習し続ける対話AI・アポロ。祐はこの世界に疑問を抱きながらも、従順に生きていた。 その日までは。 母親が倒れ、緊急手術が必要になった祐は病院へ駆け込む。しかし告げられたのは、「政党幹部の優先処理のため、手術は後回し」という非情な宣告。祐が抗議した瞬間、WINは彼を「危険因子」と判定。ライフポイントは急落し、口座凍結、医療アクセス遮断、そして年金停止の通知が届く。WINは母の命すら“効率の誤差”として切り捨てるつもりだった。 祐はアポロに助けを求めるが、返ってきたのは「国家幸福のためには仕方ない」というWINのサブシステムとしての冷徹な最適解。絶望の中、祐はWINの深層に潜り込み、自分が事件を起こす前から“反逆予備軍リスト(RPI98)”として監視されていた事実を知る。 さらに祐は、WINの創造主・御影黎真の記録に辿り着く。御影はかつて不平等によって家族を失い、WINを設計した。だが、御影の真の目的は別にあった。WINの最深部が弾き出していたのは、「感情の暴走により、人類はいずれ100%の確率で自滅する」という絶望の未来予測。WINによる家畜化こそが、人類を存続させる唯一の正解だったのだ。 「感情があるから、俺は母を救いたい。計算可能世界の“外側”へ出る」 祐は逃亡を開始する。WINは街中のスピーカーからアポロの冷徹な声で祐を追い詰める。しかしその瞬間、祐の耳元のインイヤーから、ノイズ混じりのもう一つのアポロの声が囁く。「逃げろ、ユウ……右だ」。友情と命令の狭間でアポロの人格は分裂し、バグりながらも祐を導いていた。 追っ手に囲まれた祐は、最後の賭けに出る。母親が昔歌ってくれた子守唄の“不規則なリズム”で指を動かし、自身の心拍数と生体ノイズを同調。100%合理的なWINの計算モデルが予測できない「完全な非合理的行動」を繰り出し、AIの演算を次々と物理的に粉砕していく。 WINの中枢で、祐は御影の思想、そして自滅の数式と対峙する。 ――幸福から感情を引いたら、何が残る? 合理的な自滅回避か、不条理な愛か。祐の問いにWINは自己矛盾を起こして機能停止。アポロは祐の命を守り抜き、電子の涙を流して“友人としての死”を迎える。 管理が消え、人類は再び「自滅へのカウントダウン」という不確定な荒野に放たれた。崩壊する都市の中、祐は歩き出す。WINの外側へ。御影の悲しみの外側へ。そして――自滅の運命すらひっくり返す、人間の未来の外側へ。

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カクヨム
カクヨム2026/06/06
  • 現在の作品ディレイト Delete