あらすじ
インドネシアから松本へ。僕を待っていたのは、冷たい春の雨と、見たこともない漢字の羅列、そして「孤独」という名の高い壁だった。
松本県ヶ丘高校の教室で、僕はテレビの砂嵐のように動けなくなった。言葉が出てこない。震える声、赤くなる顔。教科書で覚えたはずの日本語は、緊張でどこかへ消えてしまった。
「僕はここで、どうやって生きていけばいいんだろう?」
そう絶望した僕の机に置かれたのは、一つの温かいおむすびと、真っ赤なイチゴミルク。そして、不器用だけど温かい、クラスメイトたちの笑顔だった。
これは、言葉の通じない異国の地で、一人の少年が「教科書には載っていない本当の優しさ」に出会う物語。夕焼けに染まる松本の街並みと、春風に舞う桜の花びらが、凍えていた僕の心を少しずつ溶かしていく。