あらすじ
「……店長。今すぐその、お店の準備やアタシたちの脳内を見物している『読者』という人たちを全員追い出してください。営業妨害です」
「え?『耳まで真っ赤になっている』!? 誰ですかそんなデマ書いたの!」
「……っていうか、店長、なんでニヤニヤしてるんですか、まかないに大量のタバスコ入れますよ!?」
今日も、小さな飲食店は平和(?)である。
夫婦のようで、夫婦じゃない。
だけど、あのふたりじゃないと絶対に回らない店──。
厨房を支える少しヘタレでプロな38歳独身の店長と、ホールを切り盛りする現実派32歳独身の従業員・音羽。
二人だけで切り盛りする小さな飲食店は、今日も静かに営業中。
営業時間は11時〜14時、そして、18時〜20時。
けれど、本当に濃密な時間が流れるのは、その外側。
仕込み、まかない、閉店後。
10年一緒に働けば、言葉なんていらない。
好きな食べ物も、体調も、考えていることも、だいたい分かる。
だけど肝心なことだけ、ずっと言えない。
恋人未満。家族未満。
でも、誰より近い。
これは、“また明日”を10年積み重ねた二人の、少しだけ普通じゃない日常の物語。