あらすじ
アルファポリス 現代文学部門 23位継続中
昼間は「鉄の無表情」、夜はワンルームで缶チューハイ片手にネコと語らう——
そんな三十二歳の営業課長が、今日も理不尽と戦う。
東園寺聖愛、三十二歳。
国内圏外の日暮里に本社を構えるアパレルメーカー「エール・ダンジュ」の営業課長にして、社内随一の何でも屋。
月の三分の一は地方の得意先廻り。クレーム対応、棚卸し、不正調査、後輩指導——肩書きは「課長」だが、実態は「なんでも引き受ける人」だ。
オフィスでは完全無欠の無表情。Excelと規程と論理を武器に、どんな理不尽も静かに、そして確実に片付ける。
だが、帰り道のコンビニで洋子さんに一言もらうと、ちょっとだけ顔が崩れる。化粧室の鏡に向かって、誰にも言えない本音をこぼす。ワンルームに帰れば、雌猫サラの前でだけ、全部曝け出す。
結婚願望はある。建前だけど。……建前、だけど。
同期の太一郎はいつもにやにやしている。子分の壱太はいつも顔が暗い。壱太の子分の鯉太はいつも順番が逆だ。
それでも、この会社は、なぜか嫌いになれない。
定時退社と平穏な飲酒時間を守るため、聖愛は今日も、静かに、負けない。