あらすじ
北陸の小京都と呼ばれる小さな町から、十八歳の沙羅は京都のミッション系女子大学へ進学した。
慣れない都会の空気に戸惑いながらも、六月の三条の夜、彼女の人生をそっと変える出会いが訪れる。
白いスーツを纏い、どこか影を帯びた静かな青年——蓮。
四国の阿波踊りで知られる地方都市から京都へやってきた二十歳の大学生。
二人は偶然のように、しかし必然のように、コンパの席で隣り合った。
公衆電話のベルに震えた指先。
雨の哲学の道で交わした小さな言葉。
夏休みの沈黙に揺れる心。
そして、再び鳴った寮の電話。
——あの恋は、完結するのか。それとも。
四十年前の記憶をたどりながら紡がれる、淡く、切なく、そしてどこか温かい恋の物語。
過ぎ去った時間を静かに抱きしめ、未来へ歩き出すための一冊。