あらすじ
慶長五年(一六〇〇年)、関ヶ原の戦いに敗れた西軍の将兵たちは、東軍の追手に追われながら散り散りに落ち延びていった。
信濃の山里に生きる三澤傅兵衛の一家もまた、その波に飲み込まれた。真田に仕えた傅兵衛は、息子の左門・勘兵衛とともに松本を目指し、雪解けの山道を必死に駆けた。しかし追手の足音が迫るなか、三人はやむなく二手に分かれることを決断する。
父と弟を松本へ逃がすため、長男の左門はひとり南へ──駿河を経て、伊豆へと向かう道を選んだ。
飢えと孤独と、追手の恐怖。それでも左門は歩き続ける。三澤の血を絶やさぬために。敗者として生きることを、自らの誓いとするために。
これは、乱世の敗者として生きることを選んだ一人の青年の、静かな闘いの物語である。