あらすじ
他人の恋愛相談に乗り、その成就を願いながらも、いつも自分だけが取り残される孤独を抱えていた17歳の綾瀬楓梛(あやせ ふうな)。
大好きな人を自分から遠ざけてしまった過去の悔恨から、彼女は2年もの間、恋という感情から逃げ続けていた。
「他人が幸せになれて、私は独りだね」
夜な夜な訪れる寂しさと向き合うため、彼女は親友の亜紀に黙って、原稿用紙に向かい始める。被るのは「彩世楓(あやせ かえで)」という覆面の仮面。自分の生々しい本心を「彩世の物語」というフィルターを通すことで、楓梛はもう一度、あの秋の夕暮れに感じた恋心と向き合う覚悟を決める。
――恋が来ないなら、こっちからお迎えに行ってあげましょう。
それから数年。言葉を紡ぎ続け、気づけば大学生になった楓梛は、多くの人と出会い、様々な喜怒哀楽を知っていく。
しかし、彩世楓の物語の中の「私」には、まだ名前がつけられないままでいた。
今でも夢に見てしまう、大好きだった「彼」の背中。名前を呼ぼうとして、ハッと気づく。
――あれ? 名前、なんだっけ?
色褪せない記憶と、薄れていく彼の名前。
本当の意味で「好きという感情の正体」を知るために、楓梛は彩世楓として、そして自分自身として、新たな恋の一歩を「実践」するために歩み出す。