あらすじ

体重87キロ。着地のたびに床が鳴く。 石倉蓮司は、太っている。体操選手として、それは最初から答えの出ている話のはずだった。 でも蓮司には、誰にも言えないものがあった。空間が、透けて見える。距離と角度が一度に入ってくる。着地点が、跳ぶ前から分かる。 才能と呼ぶには不安定すぎた。感覚と呼ぶには精密すぎた。 能力を使って勝った日から、体育館の空気が変わった。7年間積み上げてきた菊野は答えを見失い、田島は矛盾を抱えたまま去り、城戸は「解決しない」と言った。 空間は何も変わらない。人間が変わった。 完璧に近い演技をして、全国には届かなかった。膝は持った。体は答えた。空間は見えた。それでも、何も救われなかった。 身体も才能も、誰かを救う道具にはならなかった。

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カクヨム
カクヨム2026/06/04
  • 現在の作品【スポーツ】重力の選手———空間は見える。体は、まだ間に合わない。