あらすじ
「――こうなった責任は俺にある。君たちは、次から間違えないようにね」
名誉を奪われ、爆発事故で右半身を焼かれ、何より大切な友の命を失った。
それでも、錬金術の教授であったケインは、教え子たちをただの一度も責めなかった。
感情に任せて生徒を責める教育など、何の意義もないから。
すべてを失い、静かに学園を去ったケインは、辺境の街で穏やかな日々を送っていた。
その傍らには、素朴で、無害で、けれど彼を狂信的に慕う『普通の子』クロエの姿がある。
ケインは彼女を我が子のように、心から慈しんでいた。
一方で、残された元弟子たちは、生き地獄の中にいた。
責め立てられ、罰せられていれば、まだ言い訳ができた。
逃げ道を失った彼女たちは、血を吐くような努力で己の罪と向き合い、やがて錬金術の頂点へと登り詰めた。
「今度こそ先生に相応しい自分になって、あの優しさを買い戻すんだ」
狂わんばかりの執着で、極上の素材や富を抱え、ようやく恩師の元へと馳せ参じる。
しかし、待っていたのは、手に入れた絶大な力と引き換えに、二度と巻き戻らない冷酷な現実だった。
完璧な命を創る術を得たのに、あのとき殺した先生の友は生き返らない。
偉大な研究成果を挙げたのに、かつて自分たちに注がれるはずだった愛は戻らない。
元素のすべてを支配できるようになったのに、先生の火傷痕は消せない。
そして何より――。
先生の隣、自分たちが座るはずだった特等席には、一度も彼を裏切らなかったクロエが、当たり前のように収まっていた。
「あ、ありがとう。でも、私にはもう必要ないんだよ」
どこまでも聖人のように穏やかに拒絶されたように感じた元教え子たちは、過去の浅ましさを突きつけられ、今日も嫉妬と後悔で呼吸の仕方を忘れていく。
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