あらすじ
現代の外科医・相葉凪沙(あいばなぎさ)は、深夜の手術中に突然意識を失い、気づけば安政六年(1859年)の長崎に転生していた。
宿った身体は、ドイツ人医師シーボルトの血を引く混血の少女・楠本伊根(くすもといね)。三十二歳の外科医の記憶と知識を持ちながら、女であるという理由だけで医術を認められない時代に放り込まれた凪沙は、ひとまず「伊根として生き残ること」を目標に動き始める。
しかし彼女が転生した年は、長崎を起点とした安政コレラが猛威を振るいはじめた年。町で次々と倒れる患者たち。そこに混じる、どう考えても感染症では説明できない「奇妙な死に方」をした遺体が一つ。その謎の死に、凪沙は現代の医学知識と、持ち前の「観察眼」で挑む。
捜査相手は、怪しく美しい長崎会所の役人・坂東玄十郎(ばんどうげんじゅうろう)。異国の匂いを纏う謎多き男と、隠しても滲み出る医者の性分――
死の謎を解くたびに、時代そのものが動き始める。