あらすじ

扇の裏側だけが、彼女の居場所だった。 ヴァイスフェルト公爵家の外交はすべてセレーナが回している。 条約を設計し、各国と交渉し、合意を積み上げる日々。 けれど署名欄に彼女の名前が並んだことはない。 夫の口癖はいつも同じだった。 黙って笑っていろ。 功績は夫のものになり、セレーナには扇の裏の沈黙だけが残る。 三年間、それを受け入れてきた。 同盟の会議から締め出された日、怒りは来なかった。 もっと静かな何かが、音もなく閉じた。 宝石も衣装も置いて、屋敷を出る。 持ち出したのは交渉記録の手帳一冊。 化粧台には、夫に贈られた扇だけが残された。 隣国から届いた一通の書簡にこう書かれていた。 あなたの言葉を聞かせてほしい。 三年間、誰にも言ってもらえなかった一言だった。 妻が抜けた公爵家で、何が起き始めるのか。 扇を手放した女は、どんな顔で笑うのか。

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小説を読もう2026/06/04
  • 現在の作品夫に「黙って笑っていろ」と言われ続けたので、この国で笑うのはやめにします