あらすじ
田舎で「沼抜き師」として見習いをしている透は、師匠の鹿目に命じられ、初めて一人で依頼を受ける。依頼人は、原因不明の不調に悩む女子高生・結衣。施術を始めた透は、通常とは異なる重く黒い「もらい泥」を感じ取る。それは、彼女が所属するコミュニティで起きた三人の死と、誰にも言えず抱え込んできた感情の蓄積だった。
透は当初、技術として泥を抜こうとするが、結衣の話を十分に聞いていない自分に気づく。父の死の際、自分もまた「話を聞いてもらえなかった」記憶が重なり、透は初めて依頼人の言葉に向き合う。結衣が三人への想いを語る中で、泥に宿る声は次第に穏やかなものへと変化していく。
結衣は泥をすべて消すのではなく、一部を残す選択をする。透はそれを受け入れ、施術を終える。今回の経験を通じて透は、沼抜きとは単なる処理ではなく「人が自ら動けるよう道を開くこと」だと理解する。師匠や父もまた、ただ寄り添い待つ存在だったのだと気づき、透はようやくその本質に辿り着く。