あらすじ

のん太は、ただの猫ではなかった。 亡くなった父が拾い、名前をつけ、家族の時間を抱えたまま生きていた猫だった。 学校に行けなくなった悠介にとって、のん太の水を飲む音、布団の足元の重み、父の古いタオルに丸まる姿は、かろうじて日常をつなぎとめるものだった。 けれど、青信号の横断歩道で、その重みは突然消える。 加害者は謝る。 警察は確認する。 弁護士は言葉を整える。 学校も母も、悠介を守ろうとする。 それでも、のん太は「物損」として扱われていく。 名前のある存在が、言葉と手続きの中で少しずつ小さくされていく。 返してほしかった。 ただ、それだけだった。 けれど、その願いはやがて、越えてはいけない場所へ悠介を連れていく。

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カクヨム
カクヨム2026/06/03
  • 現在の作品青に染るアンバー