あらすじ
僕の名前は冬野湊。
Xに鍵をかけた裏アカウントで、誰にも届かない言葉を書いている。フォロワーは、五人だけ。
――そのうちの一人が、僕の言葉を、別人の名前で世界に流していると知ったのは、ずっと後のことだった。
二十四万人が、僕の文章を、僕じゃない誰かが書いたものだと信じて、読んでいる。
書いた本人だけが、それでもまだ、書くのをやめられずにいる。
ある雨の日。
誰も来ない旧図書室で、僕は、声を殺して泣いている彼女を見つけた。
白瀬凛。学年一位。誰もが憧れる「完璧美少女」。
彼女が、スマホの画面で泣きながら読んでいたのは――別人の名前で世界に流れている、僕の文章だった。
「あの人だけが、私が壊れていないことを知っている」
白瀬凛は、三年間、ある一つの匿名アカウントを信仰して生きてきた。
彼女は、まだ知らない。
その救世主が、隣の席の冴えない男であることも、
その救世主の言葉が、別の誰かの名前で世界に届けられていることも。
これは、白瀬凛が「本物」を知るまでの、僕の三年と数ヶ月の話。
長い長い梅雨が、まだ、明けない――
【登場人物】
◆冬野湊(ふゆの・みなと)
高2男子。教室の隅で気配を消す陰キャ。X鍵アカに書いた言葉が、誰かに盗まれて世界に流れていることに、ある日気づく。
◆白瀬凛(しらせ・りん)
冬野湊の隣の席。学年一位の完璧優等生。三年前のある夜、たまたま読んだ匿名アカウントの一文に救われ、それ以来ずっと信仰してきた。
◆神崎蓮/藤代葵/滝川美音
同じクラスの面々。それぞれが、湊と凛の異変を、それぞれの距離で見ている。
【ジャンル】学園ラブコメ・現代ドラマ・心理戦