あらすじ
クラスの中心にいた美少女・瀬川夏帆は、罰ゲームの嘘告白で笑いものにされた。
告白してきた岸谷は、本当は夏帆が好きだった。
けれど本気で告白する勇気がなく、罰ゲームという逃げ道を使った。
断られても冗談で済ませられるように。
笑われても、本気じゃないと言い逃れできるように。
そのせいで夏帆は、自分が一瞬だけ嬉しいと思ってしまったことごと笑われた。
居場所だったはずのグループも、好きだったかもしれない相手も、誰も彼女を守らなかった。
そんな時、教室の端にいる目立たない男子・久住遼は、自販機で買った温かい缶コーヒーを一本渡す。
「飲めよ。泣いた後って、喉が変になるから」
慰め方なんて分からない。
気の利いた言葉も言えない。
しかも久住自身は、缶コーヒーが嫌いだった。
それでも夏帆にとっては、その一本だけが、自分を笑わなかった証だった。
翌日から、夏帆は久住の隣に来るようになる。
最初は、無理に笑わなくていい場所だった。
やがて、笑えるからいたい場所になっていく。
ほうじ茶、ミルクティー、緑茶、アイスティー。
少しずつ増えていく「嫌いじゃないもの」と一緒に、二人の距離も近づいていく。
一方で、夏帆を笑った者たちは気づき始める。
彼女の笑顔は、もう自分たちには戻らない。
これは、嘘告された美少女を派手に助ける話ではない。
嫌いな缶コーヒーを渡しただけの男子が、彼女にとって特別な隣になっていく話。