あらすじ
それは本来、開けてはいけない類のものだったのかもしれない。
けれど少年は、それを「ただの落とし物」くらいの気軽さで開けてしまう。
この世界では、人の感情が静かに滲み出る。
恐怖は形を持ち、執着は歪みとなり、未練は現実に影を落とす。
やがてそれは、人の手に負えない“怪異”となって現れる。
そして、その歪みに対して干渉し、解決できる人間が居る。
それが「異能者」と呼ばれる存在だった。
異能とは選ばれた力ではない。
世界の歪みに“偶然適応してしまった”副作用にすぎない。
少年はその日。
一振りの妖刀と出会うことで、その歪みのただ中へと踏み込んでしまう。
「あら、開けちゃったの?」
軽く、柔らかく、どこか人間離れした落ち着きのある声で。
まるで最初からすべてを知っていたかのように、その刀は笑う。
「もう引き返せないわね?大丈夫よ。少なくとも、今すぐ死ぬような選択はさせないから」
無価値だと思っていた少年は、力を得ることで初めて必要とされる。
だがそれは同時に、壊れていく世界に最も近い場所へ立つことでもあった。
夜の狭間で拾われた妖刀は、今日も静かに笑っている。