あらすじ

それは本来、開けてはいけない類のものだったのかもしれない。 けれど少年は、それを「ただの落とし物」くらいの気軽さで開けてしまう。 この世界では、人の感情が静かに滲み出る。 恐怖は形を持ち、執着は歪みとなり、未練は現実に影を落とす。 やがてそれは、人の手に負えない“怪異”となって現れる。 そして、その歪みに対して干渉し、解決できる人間が居る。 それが「異能者」と呼ばれる存在だった。 異能とは選ばれた力ではない。 世界の歪みに“偶然適応してしまった”副作用にすぎない。 少年はその日。 一振りの妖刀と出会うことで、その歪みのただ中へと踏み込んでしまう。 「あら、開けちゃったの?」 軽く、柔らかく、どこか人間離れした落ち着きのある声で。 まるで最初からすべてを知っていたかのように、その刀は笑う。 「もう引き返せないわね?大丈夫よ。少なくとも、今すぐ死ぬような選択はさせないから」 無価値だと思っていた少年は、力を得ることで初めて必要とされる。 だがそれは同時に、壊れていく世界に最も近い場所へ立つことでもあった。 夜の狭間で拾われた妖刀は、今日も静かに笑っている。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/06/03
  • 現在の作品夜の狭間の妖異録 ~拾ったのは、しゃべる妖刀でした~