あらすじ
別の世界で、まあ、それなりの立場にいました。
魔王だの勇者だの王様だの、何か事を起こす前に、とりあえず俺に話を通してくる。
そういう“ドン”をやってた男です。
それが今こっちで何やってるかというと。
六畳一間、家賃二ヶ月滞納、実質無職。
引退するとき、向こうから古ぼけた郵便受けをひとつ持たされましてね。
これがなぜか、まだ繋がってるんですよ。
毎晩、手紙が届く。「魔王城に総務部ができました」「勇者が卒業できません」「至急ご裁定を仰ぎたく」。
だいたい、相談か、愚痴です。
で、それを地方FMの深夜枠で読み上げてます。
こっちで聴いてるのは、四人くらい。
でもどうやら箱の向こうじゃ、異世界の連中が全員、息を殺して聴いてるらしくて。
おかげで、俺が酔った勢いでこぼした一言で、たまに国がひとつ、消えます。
本意じゃないです。俺はただ、お便りを読んでるだけなんですけどね。
——というわけで、今夜も深夜二時。お便り、届いております。どうぞ、お付き合いください。