あらすじ
雨は血を洗い流してはくれない。
巨大な犯罪都市《シャングリラ》。そこではマフィア、闇金融、汚職警官、殺し屋たちが昼夜を問わず暗躍し、銃声と悲鳴が絶えない。だが、その裏で事件の痕跡を消し去る者たちがいた。死体、血痕、凶器、証拠――犯罪の残骸を片付ける裏社会専門の“掃除屋”である。
中川ジンは、そんな掃除屋の一人だ。冷静沈着で皮肉屋の彼は、誰にも深入りせず、ただ仕事として死体を処理し続けていた。しかし彼には誰にも知られてはならない秘密があった。
数年前、旧十三区域で発生した謎の感染事故。そこで最愛の恋人・不動凛を失ったジンは、怪物へと変異した彼女を殺すことができず、自らの事務所の地下へ閉じ込めていたのだ。
さらにジン自身も感染者だった。発症による幻覚の中で、凛は生前の姿のまま現れる。彼女は優しく語りかけ、ときに忠告し、ときにジンの心を抉る。だがそれが幻覚なのか、それとも本当に凛の意識が残っているのかは誰にもわからない。
そんな彼のもとへ、日本から逃げてきた少女・不動美玖が転がり込む。多額の借金を背負った彼女は、闇金融組織の担保としてジンの事務所で働くことになる。明るくも臆病な美玖は、死と暴力が日常であるシャングリラに戸惑いながらも、少しずつ掃除屋の仕事を覚えていく。
だが彼女はまだ知らない。自分の姉である凛が死んではいないことを。そして地下室の奥で、人間でも怪物でもなくなった何かが今も生き続けていることを。
やがてジンたちは、都市そのものを蝕む感染症の真相と、旧十三区域で行われていた非人道的な人体実験に巻き込まれていく。闇金融の支配者、伝説の殺し屋、汚職警官、そして怪物たち――シャングリラに隠された秘密が暴かれる時、ジンは愛した人を終わらせるという最も残酷な選択を迫られる。
これは、死体を消す男が最後まで消せなかった“恋”の物語。
そして、怪物になった恋人を手放せなかった男が、自らの過去と向き合うダークノワール・ホラーである。