あらすじ

愛知県名古屋市港区に住む神谷恒一、三十六歳。 妻と小学四年生の娘、五歳の息子を持つ、ごく普通の会社員である。 毎朝、家族と朝食を囲み、あおなみ線と名鉄を乗り継いで知立市の勤務先へ向かう。特別な才能もなければ、危険な仕事をしているわけでもない。どこにでもいる父親だった。 その日も、いつもと変わらない朝だった。 しかし通勤中、恒一はスマートフォンで奇妙なニュースを目にする。 愛知県岡崎市の山中にある国立研究施設で発生した謎の事故。 研究施設の半分を飲み込む巨大な空間断裂。 そして、その先に見える“この世界ではない景色”。 SNSでは「CGだ」「フェイク動画だ」と騒がれていたが、多くの人々と同じように恒一も深刻には受け止めなかった。 だが、その数時間後。 研究施設に発生した巨大ワームホールから、異世界の生物たちが現実世界へ侵入を開始する。 ワイバーン、グリフォン、オーガ、ゴブリン、巨大昆虫、恐竜種――。 神話や伝説、そして空想の世界にしか存在しなかったはずの生物たちは瞬く間に愛知県各地へ拡散し、日本は未曾有の混乱に陥る。 勤務先である知立市の工場も例外ではなかった。 突如として作業室を襲ったワイバーンによって日常は崩壊し、同僚たちは次々と命を落としていく。 戦う力を持たない恒一にできることはただ一つ。 逃げることだけだった。 目指す場所は一つ。 港区にある家。 家族の待つ家。 しかし電車は停止し、道路は渋滞と事故で麻痺し、人々はパニックに陥っていた。 異界生物が徘徊する街を徒歩で横断しながら、恒一は家族の元へ帰ろうとする。 途中で出会う避難民たち。 通信障害によって途切れ途切れになる家族との連絡。 助けを求める人々と、自らの生存との間で揺れる葛藤。 そして少しずつ崩壊していく日本の日常。 それでも恒一を前へ進ませるのは、一通のメッセージだった。 ――パパ、いつ帰ってくるの? 異世界災害発生初日。 これは世界を救う英雄の物語ではない。 崩壊した世界の中で、ただ家族の待つ家へ帰ろうとした、一人の父親の物語である。

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小説を読もう2026/06/03
  • 現在の作品『異世界が来た日の帰り道』