あらすじ
冒険者たちが日夜挑みに入るダンジョン。
その入口から少し離れた路地の先には、度重なる増築と改装によって誰にも全容を把握できなくなった地下街がある。
人々はそこを『迷宮街』と呼ぶ。
迷宮街は、ダンジョンではない。
少なくとも、そういうことになっている。
そんな迷宮街の奥に、強い欲を抱えた者だけが辿り着く小さな店がある。
店の名は、“福々堂”。
真っ赤なチャイナ服に、真っ黒な丸サングラス。
怪しげな口調で客を迎える美しい女店主、黒蓮。
彼女が売るのは、願いを叶える奇跡ではない。
金、力、名声、愛、復讐、生存。
欲しいものへ届くための“モノ”である。
値段は、客が決める。
金でも、血でも、髪でも、石ころでも、何もなしでも構わない。
ただし、購入代金と使用代償は別。
嘘はつかない。
聞かれれば答える。
だが、聞かれなかったことは言わない。
今日もまた、欲を抱えた誰かが、迷宮街の奥へ迷い込む。
これは、迷宮街“福々堂”を訪れた者たちの奇譚。