あらすじ
母が下関へと帰ってから、ひと月。
門司港の坂の上の部屋には、再び私一人の静かな日常が戻ってきた。
けれど、以前と決定的に違うものがひとつだけある。
キッチンの棚に並んだ、実家から持たされた少し不揃いな器たち。
「あんた、これ使いなさい」とぶっきらぼうに渡されたスープ皿に、温かいスープを注ぐたび、海の向こうにいる母の気配が優しく部屋を包み込む。
寂しさは、もうない。
私は母がくれた温かい日常の道具たちに囲まれながら、自作の本棚へ、新しい「大好きな物語」を迎え入れることにした。
母から譲り受けたのは、器だけではなかった。
段ボール箱の底に眠っていたのは、母が若い頃に書き溜めていたメモと、選び抜かれた十冊の本。
原田マハ、西加奈子、津村記久子、一穂ミチ……。
「生きること」と「働くこと」を真っ直ぐに見つめる、女性たちのための物語。
前作で描かれた母と娘の切ない距離感から一歩踏み出し、今度は「一人の女性として、母の人生とどう向き合うか」を紡ぎます。
門司港の心地よい潮風を感じながら、あなたも私と一緒に、新しい本棚のページをめくってみませんか?