あらすじ
会社の不祥事を告発した投稿が炎上し、職も恋人も失った奏は、実家に引きこもり誰にも助けを求められずにいた。
ある夜、眠れず外を歩くうちに迷い込んだ廃道の先で、不自然に存在するコンビニへ辿り着く。そこは時間が歪み、行き場を失った人間が流れ着く「沼の底」のような場所だった。店員は死後ここに留まったと言い、客たちもまた動けなくなった者たちだった。
奏はそこで、八年前に亡くなった同級生・灯と再会する。灯は長く「何か」を待ち続けていたが、奏の来訪と告白を受けて、自分が待っていたものに気づく。奏もまた、炎上や過去への罪悪感を初めて言葉にし、灯に受け止められることで、誰かに救われるのを待つのではなく、自分で沼から抜け出す覚悟を得る。
コンビニを出ると現実に戻り、奏は少しずつ外へ出られるようになる。傷は残ったままだが、他者の評価ではなく、自ら動くことで前へ進み始める。そして現実のコンビニの扉に、あの沼の揺らぎを時折見出しながら、あの場所と灯の存在を胸に抱き続ける。