あらすじ
王都の冒険者ギルドで働く受付嬢リズは、いつも泥だらけのブーツで帰ってくる冒険者カイルが少し苦手だった。
北の凍土帰り特有の灰色の泥。
無愛想なくせに、怪我ばかり増やして戻ってくる男。
「汚れるんですけど」
「貸しにしてくれ」
そんな他愛ないやり取りを繰り返すうち、リズの日常にはいつの間にか彼がいた。
だが、大規模討伐の遠征後、カイルは行方不明になる。
泣けなかった。
だって、またふらりと帰ってくる気がしていたから。
――五年後。
雪解けの崖から見つかったのは、泥のこびりついた片方のブーツだけだった。
これは、長い間泣けなかった受付嬢が、ようやくひとつの恋を失うまでの話。