あらすじ
匿名音声劇アプリ《コエバコ》に、短い台本を投稿している高校生・瀬名律。
名前も顔も出さず、「空欄」として書いている彼の台本は、読む人を選ぶ。
台詞は少なく、感情の名前もほとんど書かない。だから演者は、自分の声でその隙間を埋めることになる。
ある夜、律の台本を、アプリ内で人気の演者・ミオリが読む。
明るい声も、泣く声も、怒る声も上手い。
コメント欄が求める声を、完璧なタイミングで差し出せる演者。
けれど、律の台本の一行だけ、ミオリは台本通りに読めなかった。
「少しだけ、腹が立った」
その声から、技術が消えた。
読めたことにして逃げようとしたミオリは、律に個別メッセージを送る。
そして次の配信で読む台本を、律に依頼する。
かわいい子。
でも、本当は怒っている子。
律は台本を書く。
ミオリは怒る。
読めない。
それでも、もう一度読む。
これは、声優ラブコメではない。
声と台本でしか本音を渡せない二人が、互いの作った声と書いた嘘を少しずつ壊していく話。