あらすじ
魔王が倒されてから三年。
決戦の地だった魔王城は、今では観光名所になっていた。
土産物屋には魔王まんじゅうが並び、城門前では勇者の等身大パネルが観光客を出迎え、決戦の間は記念撮影スポットとして開放されている。
世界は平和になった。
少なくとも、新聞と観光組合はそう言っている。
だが中央市庁・特殊案件課の新人職員エリオにとって、平和とは山積みの苦情と書類のことだった。
旧魔王軍のゴーレム清掃員が労働基準を主張し、ドラゴンの昼寝が観光馬車を止め、魔王城の残留魔法が観光客を迷路に閉じ込める。
そして配属初日、エリオに任されたのは、勇者が置いていった「聖剣」の取り扱い問題だった。
勇者は相棒としての所有権を主張。
鍛冶師ギルドは未払い債権に基づく担保権を主張。
教会は聖遺物としての監督権を主張。
王宮は国有財産としての所有権を主張。
魔族側は裁判の証拠品として保全を要求。
全員違うことを言っている。
そして、全員それなりに筋が通っている。
眠そうな課長ミレイの方針はひとつ。
「世界を変えることではありません。面倒を今日中に机の上から減らすことです」
魔王討伐後の世界で、英雄譚は請求書になり、聖剣は行政処理に回される。
これは、平和になった世界の後始末を押し付けられた特殊案件課の業務記録である。