あらすじ
「ごめんなさいね。こんなおばさんに付き合わせちゃって。退屈だったわよね?」
週に一度、三時間だけ。
私を指名しながらも、自分からは決して手を握ろうともしない年上の女性客──浅葱 遙(あさぎ はるか)。
恋という名の熱病(バグ)を理解できない私にとって、『レンタル彼女』として振る舞う時間は、わりの良い仕事のはずだった。
欲しがってるくせに、求めない。
手を差し伸べても、ぎゅっと堪えて、拒んでくる。
遙さんは、私を介して「他の誰か」を見つめている。
ずっと、ずっと、あの冷たい水底で、言えなかった想いを抱きしめたまま。
客としての一線を守り続ける貴女と過ごすうちに、
硝子越しに世界を眺めていた私の内面には、目に見えない亀裂が走り始めていた──。
遙さんの『報われなかった過去』と出会った瞬間、
私の理性を、烈しい独占欲が焼き尽くす。
あぁ、ようやくわかった。きっと、これが――。
「お仕事は、これでおしまい。──これからは本当の私と付き合って」