あらすじ
気づいたら、俺は石になっていた。
過労で倒れた35歳の元会社員・佐藤賢司が転生した先は、異世界の山奥にある小さな洞穴のダンジョンコア。手も足も声もない。あるのは「このコアを壊されたら消える」という本能的な直感と、モンスターやトラップを生み出す「権能」、そして僅かなダンジョンポイントだけ。
死にたくなければ、守るしかない。
最初は外から迷い込んでくるモンスターを相手に悪戦苦闘する日々だった。しかしある嵐の夜、奴隷狩りに追われたエルフの少女・シアが洞穴へ駆け込んできた。気づけば追手を撃退していた俺は、その瞬間なぜか彼女をダンジョンマスターとして登録してしまう。
しかもこいつ、念話で話しかけてくる。
「あなた、いったい何者なの……?」
「俺はこの洞穴だ。とりあえず、ここにいていい」
こうして始まった奇妙な共同生活。シアに外の世界を教わりながら、俺は迷宮を少しずつ拡張していく。落とし穴を掘り、ゴブリンを増やし、侵入者を叩き返す。目的はひとつ——この子が安全に生きられる場所を守り抜くこと。
やがて「死んでも蘇るダンジョン」の噂が広まり、冒険者たちが押し寄せる。迷宮の周りに町が生まれ、王国が動き、勇者までやってくる。
石ころ一個から始まった俺の奮闘は、いつしか世界を巻き込んでいく。
恋愛なし。打算なし。ただ、あの子の笑顔を守るためだけの、ダンジョン経営奮闘記。