あらすじ
現代から平安の世へと迷い込み、「何の変哲もないただの下人」として地道に生き抜く覚悟を決めていた少女・梨乃。
しかしその血の滲むような努力は、稀代の陰陽頭・安明(やすあき)と道端で邂逅した瞬間に、鋭く凍りつく。
――貴族に目をつけられたら、終わりだ。
色恋にルーズな特権階級への恐怖から、必死に下人を装い、やり過ごしようとする梨乃。だが、その泥に塗れた偽装すら、安明の冷徹な瞳の前では無意味だった。彼が見抜いたのは、梨乃自身すら自覚のない、世界を根底から揺るがすほどの「浄化の力」。「ただの下人です」という必死の訴えは虚しく、梨乃は有無を言わさぬ安明の手によって、半ば強引に彼の邸へと囲い込まれてしまう。
最初はただ、危険な異分子としての監視と保護だった。しかし、邸で時間を共にし、梨乃の素朴で真っ直ぐな魂に触れるうち、冷徹だった安明の心には、名前のない執着と情愛が静かに、けれど深く根を張っていく。
そんな矢先、梨乃の圧倒的な霊力は、国の命運を握る帝の知るところとなってしまう。
現代人ゆえの危うい境界線、帝からの狂おしいほどの寵愛。そして、宮廷の覇権を狙う左大臣から向けられる、執拗な殺意と謀略――。
呪詛が渦巻く内裏の闇に囚われ、心身ともに追い詰められてゆく梨乃。
すべてを敵に回してでも、彼女を自分の元へ連れ戻す。
その強い意志のもと、安明は冷酷かつ鮮やかな策を巡らせるが……。
果たして安明は、最高権力の檻から梨乃を奪還し、その手に取り戻すことができるのか!?
――だが、激動の運命の裏で、梨乃の内に眠る力は今もなお異常な速度で膨れ上がり続けていた。
変わりゆく世界の歯車と、静かに忍び寄る国を揺るがす危機。
彼女の力がもたらすのは、救いか、それとも破滅か。