あらすじ
AIシステム「GHA」が都市のすべてを管理する近未来の東京。
配送も、監視も、教育も、歴史さえも――GHAが「最適化」する時代に、職人のテツは誰も見向きもしない廃ビルの修繕を続けていた。
虎ノ門の古いビルで、テツは壁の奥に奇妙なパイプを発見する。
GHQ通信部・第三回線、一九四七年。横田基地まで直通で繋がる、公式記録に存在しないその回線は、今も生きていた。
偶然通りかかった文科省の官僚・ハルトを巻き込み、テツは東京の地下へと潜る。
AIが「崩落率九十八パーセント」と弾き出した銀座の古い郵便トンネル。誰も入れないはずのGHAメインサーバー室。
機械が「不可能」と言う場所を、テツの手だけが通り抜けていく。
壁を叩けば、何が詰まっているかわかる。
コンクリートの音を聞けば、どこに重さがかかっているかわかる。
七十年前のレンガは、今もちゃんと教えてくれる。
デジタルが書き換えた歴史の下に、人間の手が積み上げたものは消えていない。