あらすじ
両親を事故で亡くし、児童養護施設「白樺園」で育った神崎美咲。
施設を卒園後、奨学金と努力だけを武器に国公立大学へ進学し、証券会社へ就職した。だが、社会に出た彼女はある現実を知る。
施設の子どもたちは十八歳までは守られる。
しかし、その先は違う。
相談する親もいない。
帰る実家もない。
失敗した時に頼れる人もいない。
ある日、美咲が妹のように可愛がっていた後輩・真由が、卒園後に道を踏み外したことを知る。
「私とあの子は何が違ったの?」
その答えは、才能でも努力でもなかった。
ただ少し、運が良かっただけ。
自分だけが助かった――。
その後悔から、美咲は卒園生を支援する小さな基金を立ち上げる。しかし寄付は集まらず、通帳の残高は減る一方だった。
それでも助けを求める声は止まらない。
進学を諦めかけた少女。
住む場所を失った青年。
保証人のいない若者たち。
昼は証券会社で働き、夜は誰も知らない相場の世界へ。
新人時代に叩き込まれた、ただ一つの教え――
「待て。待てない奴は負ける。」
その言葉だけを胸に、美咲は今日もチャートを見つめる。
これは、お金を稼ぐ物語ではない。
帰る場所を失った子どもたちのために、
帰る場所を作ろうとした一人の女性の物語。