あらすじ
「あっ!」
おれは思わず声を上げた。そうだ……そうだ、思い出したぞ。むしろ、どうして今まで忘れていたのか不思議なくらいだ。
頭の奥で何かが弾け、封じ込められていた記憶が一気に浮かび上がってきた。いくつもの過去の光景や耳鳴りのような声がチカチカと瞬き、そして断片的だったそれらは急速に繋がり、輪郭を取り戻していった――そう、これはまさに……ビッグバン。
こうしてはいられない。
おれは部屋を飛び出し、駅へ向かって走った。
おれは――宇宙人だ。
この星には数年前に調査任務のために派遣された。
母星の名はハバカル。おれはそこで生まれ、幼少期から徹底的な訓練を叩き込まれた。数多の候補の中から選抜された、誇り高きエリート諜報員である。
この星の人間と完全に見分けがつかないよう、肉体は精密に改造されている。たとえ血液検査やDNA鑑定を行っても判別するのは不可能。骨格、内臓、体臭に至るまで完璧な擬態だ。
記憶を失っていたのは、おそらく催眠処置の影響だろう。人間社会に違和感なく溶け込むための措置だ。おかげで潜入はうまくいっている。これまで何一つとして問題なく、誰からも疑われることもなかった。
しかし、今“目覚めた”。それはつまり――時が来たということだ。