あらすじ
「妾になれ」
大国アルダの冷酷公爵に、外交の場で突然そう告げられた。
小国ベルタの外交官補佐として同席していた私、ノラ・ベッカーに。
周囲は青ざめた。断れば国が危うい。頷くのが国益だと、全員の目が言っていた。
私は一秒だけ考えて、答えた。
「どうぞ」
戦争でも何でもお好きに。ただし、脅されて頷く妾など、あなたも要らないでしょう——。
公爵は三秒黙った。それから、十年ぶりに笑ったらしい。
「条件を変える。妻になれ」
断っても本気にされた。しかも、なぜか溺愛が始まった。
「断れる人間が欲しかった。俺の周りに、ノーと言える人間が十年いない」
孤独な大国の頂点と、何も持たないが本音しか言えない小国の娘。
釣り合わない二人の、対等な交渉から始まる恋。
そして——私を嵌めて父を失職させた元宰相と、公爵の名を利用し続けた元愛人は、
まとめて、静かに、完璧に、詰んだ。