あらすじ
没落しつつも、名家としての誇りと伝統を重んじる結城家。家長である生真面目な兄と、彼から深く溺愛されている妹の結(ゆい)は、古く立派な屋敷で静かに暮らしていた。そんな二人のもとに、武骨で粗野な関西弁を話す男・頼長(よりなが)が現れる。ある事情から、彼らは一つ屋根の下で奇妙な共同生活を送ることになった。
同居の条件として、兄は頼長に厳しいルールを突きつける。「経費は折半」「礼節を守り、結に下卑た口を利かない」「結を絶対に危険な目に遭わせない」、そして「結城家の家紋が入った器には触れない」こと。没落しても捨てきれない家柄への意地と、妹への過保護さが滲み出る要求だったが、頼長は「しぶといのは嫌いじゃない」と皮肉を交えつつ、面白がってあっさりと承諾する。
一見すると水と油のように合わない、誇り高き兄と図々しい頼長。しかし、そのテンポの良いやり取りを黙って聞いていた結は、これから始まる騒がしい日々にどこか不思議な予感を感じ、ほんの少しだけ口元を綻ばせた。
「私は仲裁係。喧嘩は外でお願いします」
結の静かな宣言とともに、育ちも価値観も全く異なる三人による秘密の契約が成立した。古い屋敷を舞台に、時に衝突し、時に助け合いながら、次第にかけがえのない絆を紡いでいく。没落名家の兄妹と風来坊の男が織りなす、波乱に満ちた新たな日常が今、幕を開ける。