あらすじ

営業管理部の西園ひよりは、会社で仕事を日々繰り返す。 『メール返信』『資料確認』『数字入力』『面倒な問い合わせ』 会社という場所は、誰か一人で成り立つわけもない。 営業部の九条玲央は、社内ではかなり目立つ人だった――。 容姿が良い。 仕事ができる。 気が利く。 自然に人の輪へ入っていく。 会社の中で、『営業成績は常に上位』という、かなり貴重な存在。 海外事業部の神谷蒼司は、その逆だった――。 だらしなさだけが目立つ。 印象に残らない。 仕事ができない噂。 名前だけは立派。 会社の中で、『いつも怒られている』のに、何故まだ居られるのかわからない存在。 平日の午後。 メールが届く。 電話が鳴る。 コピー機は、たまに壊れる寸前みたいな音を出す。 営業部では、『先方』が三回くらい飛び交う。 営業管理部では、『メール返信』『似た型番』『確認』社会人の呪文が飛び交う 誰かの『あとでやります』が、静かに熟成されている。 給湯室では、誰かがマグカップを洗うタイミングを見失っている。 どこかの共有フォルダで、誰が増やしたのかわからないファイルが分裂増殖している。 誰かが笑う。 誰かが黙る。 誰かのコーヒーが冷める。 会社の日常は、そういう小さな出来事の積み重ねでできている。 篠宮文乃は、そういう空気の中へ自然に入っていく人だった。 雑談へ入るのがうまい。 空気を軽くするのがうまい。 話しかけるタイミングも、少しだけ絶妙だ。 こういう人がいるから、会社は完全には壊れない。 ある雨の日。 傘を持っていなかった私は、会社のロビーで立ち止まる。 出るか。 待つか。 雨音の向こうで、夜が少しずつ深くなっていく――。

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エブリスタ
エブリスタ2026/05/29
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