あらすじ
誰にも必要とされないし、誰からも選ばれない、透明な存在。
それならばせめて会社という枠の中では、誰にも文句を言われない完璧な部品になろう。
そう胸に誓って新しい職場へ踏み出した27歳の派遣社員、三井ゆこ。
彼女を待っていたのは、効率と論理のみで人生を構成し、私情を挟まず淡々と職務を全うする冷徹な42歳の上司・宇佐美圭だった。
『君の時間を浪費させるつもりはないが、俺の思考の連続性を阻害するような事態も避けてほしい』
視線すら合わせようとしない最悪の接触から始まった、交わるはずのなかった二人の世界。
けれどゆこが不器用ながらもひたむきに、誠実に生きる姿を知ったあの日から、宇佐美の中で何かが狂い始める。
鉄壁だったはずの彼の理性を、ゆこの存在が静かに、確実に融かしていく。
時に、難解すぎる上司の言葉をピュアに受け止めるゆこと、大真面目ゆえに余裕をなくして頭を抱える宇佐美の噛み合わないラリーにクスリと笑い。
時に、選ばれない孤独を隠してきた魂が触れ合う瞬間に、互いの胸が締め付けられていく。
「……逃がさない。君は、一生……俺の腕の中で、俺だけを見ていればいい」
すべてを自分だけのものにしたい。
自覚したときにはもうその冷ややかなシトラスの香りは、重すぎるほどの『独占欲』へと姿を変えていた。
どこにでもあるオフィスの片隅で、傷を抱えた二人が真っ直ぐに向き合い、不器用に溺れていく──
『不感症の神様』と呼ばれた男の理性が融かされ、ただ一人の男として愛を乞うまでを描く、おかしくて切ない大人の恋の物語。
◇◇◇
他サイトにて掲載中の同名作を、大幅に加筆・修正したリライト版となります。