あらすじ

高校二年の春、町田花霞は新学期の教室で、誰も座っていないはずの空席にひとりの少年を見つける。 彼はまるで昔の映画から抜け出してきたような、どこか懐かしい制服を着ていた。 少年の名は、白峰朔太郎。 最初は幻だと思っていた花霞だったが、風に舞った桜の花びらが彼の机の上で跳ね、ノートの端に書いた文字が彼の時代へ届いたことで、彼が本当にそこにいるのだと知る。 朔太郎が生きているのは、昭和の終わりごろの同じ学校。 校舎も教室もよく似ているのに、少しずつ違う。 花霞の知らない校則。 まだ植えられていない花壇。 今はもう使われていない古い渡り廊下。 そして朔太郎の時代には、今の花霞の知らない風景がたしかに息づいていた。 放課後、誰もいなくなった教室で、ふたりは桜の見える窓辺で言葉を交わすようになる。 好きな本の話。 将来の夢。 家族のこと。 互いの時代の話。 会えるのは、桜が咲いているあいだだけ。 花が散れば、この不思議なつながりも終わってしまう。 それを知りながら、花霞と朔太郎は、毎日少しずつ距離を縮めていく。 けれど、桜が散る日が近づくにつれ、朔太郎の姿は少しずつ透けるようになっていく。 そして花霞は知る。 朔太郎が、なぜこの席に現れたのか。 なぜ、満開の七日間だけ、ふたりの時間が交わったのか。 春風に舞う花びらの向こうで出会った、決して同じ時代を生きられないふたりの、七日間の物語。 桜が散ったあと、その席に残るのは――記憶か、手紙か、それとも、約束か。

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カクヨム
カクヨム2026/06/01
  • 現在の作品花霞の向こうの、きみの席。