あらすじ
日経平均株価、史上最高値48,000円突破――。
テレビの向こうが「デフレ完全脱却」と華やかに踊る2026年、夏。
中堅メーカーに勤める樫村拓也(35)は、満員電車に揺られながら、175円に値上がりしたコンビニのツナマヨパンを見て小さなため息をついていた。
東京都北区に狭小3階建てのマイホームを購入し、35年の住宅ローンが始まってまだ1年。妻と娘の笑顔を守るため、拓也は「我が家は安定している、大丈夫だ」と自分に言い聞かせていた。
しかし、足元では致命的な地割れが始まっていた。
円安による海外製部品の価格高騰、経営の逼迫、そして下請けの地方町工場から泣きつかれる値上げの要求。
「出ていく金がそれ以上なら破産するぞ」と冷徹に現実を突きつける上司の黒崎。
「私たちの給料、一円でも上がった?」と家計簿を叩き、不安を怒りに変える妻の美咲。
会社に、住宅ローンに、常識に、他人の判断に「依存」して流されてきた男が、すべてを失ったとき、何を掴み取るのか。
これは、日本経済のワーストケースを背景に、自分の人生を取り戻そうともがく、ある普通の会社員の再生物語