あらすじ

目を覚ましたら、俺は婚約者の身体の中にいた。魔王との決戦の最中に暗殺された俺が、王女リリィの中で息をしている。状況を確かめようと、自分の身体に触れた、その時――「変態! どこを触っているんですか!!」 頭の中で怒鳴ったのが、その婚約者だった。 ほとんど話したこともなかった王女と、ひとつの身体に、二人。 文句を言い合うしかなかった。 夜通し殴り合った魔王との、最後の一撃。 それを、何者かに後ろから奪われた。 誰が、なぜ。――必ず暴く。そう決めた矢先、気づいてしまった。 この王宮は、おかしい。 甘く冷たい香り。毎朝の薬湯。 誰も声を荒げず、誰も「嫌だ」と言わない。 怒りも悲しみも、静かに眠らされた場所。 「私……嫌だと思う前に、いつも眠くなっていたんです」 寝たきりだったはずのリリィの身体は、何かが抜けたように軽い。 まるで、ずっと薬で眠らされていたのが、解けたように。 その夜、刺客が来た。 脆いリリィの身体。それでも俺は、床を滑り、毒の刃すら捻じ伏せる。 斬られた痛みは、リリィにも走る。それでも彼女は、声を殺して耐えた。 動けない王女と、死んだはずの俺。 痛みを分け合いながら、少しずつ、本物の相棒になっていく。 誰が、俺を殺したのか。 なぜ、リリィは眠らされてきたのか。 この国を覆う、甘く冷たい眠りの正体は――。 「いつか、お前自身の口で言えるようにしてやる」 動けなかった王女と、暗殺された勇者。 眠りのように美しいこの王宮で、俺たちは初めて、声を上げる。 「嫌だ」と、拳を握るために。

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カクヨム
カクヨム2026/06/01
  • 現在の作品眠り姫の中で、勇者は怒る 〜暗殺された勇者は婚約者の王女の身体で目覚め、自分を殺した犯人と彼女を眠らせた毒の王宮を拳で暴く〜