あらすじ
「戦争が終わったら、迎えに行く」——その約束だけを胸に、私は三年間待ち続けた。届かなくなった手紙。消息不明の報せ。それでも信じていた。あの人は必ず帰ってくると。没落士族の娘である私と、華族の跡取りである幼馴染・橘蒼一郎。身分違いの恋だと分かっていた。彼には許嫁がいることも。それでも会いたくて、私は従軍看護婦として南方の戦地へ渡った。1944年、夏。血と硝煙に満ちた野戦病院で、私は再び彼と出会う。担架で運ばれてきた重傷の陸軍中尉——それは、三年間想い続けた人だった。けれど目を覚ました彼は、私を見てこう言った。「君は誰だ?」記憶を失った彼は、私のことを知らないという。幼い頃から一緒に過ごした日々も、交わした約束も、すべて忘れて。それでも彼は、何も知らないはずの私に惹かれていく。これは偶然? それとも——。命が軽い時代に、それでも愛することを選んだ二人の、約束と運命の物語。